だれかに必要とされるってことは、
だれかの希望になるってことだ
小説の概要
著者:三浦しをん
まほろ駅前で便利屋を営む多田が偶然中学校時代の同級生と再会して事務所に転がり込まれる。
2人で色んな依頼をこなしていく過程で、事件に巻き込まれていく。
まほろ市は色んな小説の舞台となる架空の都市で『まぼろし』からきている。
第135回直木賞を受賞。瑛太と松田龍平主演で映画化。
続編に『まほろ駅前番外地』『まほろ駅前狂騒曲』がある。
登場人物
多田啓介
まほろ市駅前で便利屋を営んでいる。
バツイチ、子なし。
行天春彦
多田の中学時代の同級生。
バツイチで2歳の子供がいる。
ルル
コロンビア人の商売女
シンちゃんという彼氏がいる
ハイシー
ルルの友人でルームメイト
ヤマシタ
20代前半。
チンピラで星という元締め?の子分。
ハイシーに入れあげている。
田村由良
小学校4年生の男の子
三峯凪子
行天の元妻で医者
おススメのポイント
男性二人のバディものって大体面白い気がします。
便利屋という仕事
まず、便利屋ってよく聞くけど何をしているのかよくわからない。
たまにポストにチラシが投函されていますが、
ごみを片付けますとか、犬の散歩しますとか?
主人公が便利屋という設定自体にかなり興味を惹かれました。
本の中では笑えるものから深刻なものまで
様々な依頼を多田が引き受けて、一見役立たずの行天が鋭くサポートする。
これがすごく面白いです。
2人のコンビが絶妙
多田と行天のやり取りは非常に軽快でコメディな感じになっていて読みやすいです。
しかしどちらもトラウマまではいかなくても、過去に色々あり心に傷を負っています。
中学時代のエピソードを読むと、大人になってから反対になってる気がするけど
寡黙でクラスメイトにモテていた行天が浮浪者みたいになっているのが逆に面白いです。
どちらもわざとらしくない優しさが心地よいです。
まほろ市
架空だろうとは思っていたけど、wiki見るまで知りませんでした。
色んな小説などで架空の都市で使われている名前みたいです。
『まぼろし』=『まほろ市』なるほど!
小説のまほろ市は実際は著者の三浦さんが住んでいる
東京都多摩地区になる町田市が舞台になっているらしいです。
ちょっと治安が悪そうでだけど人情が残っていて
大阪の下町っぽい感じなのかなと個人的には思いました。
さまざまな依頼
多田便利軒の元には様々な依頼が電話で寄せれらてきます。
その依頼をご紹介。
①曽根田のおばあちゃんの見舞い
家族から90歳のおばあちゃんの見舞いに行ってくれとの依頼です。
おばあちゃんは分かっていないようで、多分気づいているという設定に思えます。
②チワワを預かる
40代前半の主婦の人からの依頼だが、これが後程ちょっとした事件になります。
チワワの名前はハナ。いつも震えています。
③バスの運行の監視
個人的にはこの依頼メチャ面白かった。バスが間引きして運行しているからそれを見張れという命令。
何のために??本当にウケる!この依頼なら私もやりたい。
④家の戸を修理
こういうのは多そうですよね。ルルからの依頼でした。
⑤子供を塾まで送る
この子供が田村由良です。子供は親に無関心なようですが、愛情がないわけではない。
しかし、子供にはそれが伝わらない。
そのことを由良くんに諭すシーンも好きです。
⑥女子高生のボディーガード
これも事件ではあるけど、なぜかこの話だけあまり印象に残ってない。
⑦男と別れたい
女子大生からの依頼。しかもクリスマスまでに別れたいらしい。
これぞ便利屋ってイメージの仕事ですね。
⑧納屋の整理
夫婦ともに高齢なので納屋を整理して欲しいとのこと。
これも便利屋って感じの仕事でしたね。リアルでも多そう。
⑨ある家族の様子を知りたい
この依頼では行天が大活躍しました。最後は多田が締めたけど。
すごく良い話でした。
「まほろ駅前多田便利軒」を読んだ感想
登場人物が魅力的ではあるがキャラの濃い人が多いです。
個人的にはバスの運行を見張れという依頼をした岡さんが昭和の親父みたいで最高です。
事件に巻き込まれていきますが、いずれも小さな事件で
銃でドンパチやるわけでもなく、ゆるく過ぎていきます。
多田は几帳面で割とサラリーマンタイプな気がしますが、
行天の方が実は目の付け所が鋭い点が面白かったです。
あまりにも不器用な行天が愛おしくなってきます。
自分が多田ならやはり気になって放っておけないだろうなあと思いました。