この異様さは何なのか?
それは本当に殺人だったのか?
「去年の冬、きみと別れ」概要
二人の女性を殺害して死刑判決を受けている死刑囚とその死刑囚の本を書くためにインタビューをしに行く僕。
しかし、動機がいまいちよく分からず違和感を感じ始める僕。
関係者にも会いに行く僕は違和感が次第に大きくなっていき、とうとう本を書くことを断念しようとするのだが・・・。
【著者:中村文則】
愛知県出身
2002年に「銃」で第34回新潮新人賞を受賞しデビュー。
中村文則はペンネームで、作風とは違い本人は明るい性格なのだとか。
今回の「去年の冬、きみと別れ」以外にも「最後の命」「悪と仮面のルール」「銃」などが映画化されている。
テーマや要素
以下のような要素が含まれています
- 謎解きミステリー
- 狂気の愛
- 芸術
- 復讐
- 小説原作
また芥川龍之介の「地獄変」を登場人物になぞらえています。
登場人物
僕
ものかき。木原坂の本を書こうとしている。
木原坂雄大
35歳。アート写真のカメラマン。姉が1人いる。2人の女性を殺害した罪で死刑囚となる。子供の頃は姉と二人で施設で過ごす。
木原坂朱里
雄大の姉。祖父の遺産で暮らしている。1度目の事件は弟は無実だと言っている。弟の写真を気味悪がっている。
吉本亜希子
一人目の被害者。雄大の写真のモデルをしていた。目が不自由。
小林百合子
2人目の被害者。雄大の写真のモデルをしていた。
斉藤
K2のメンバー。僕の取材を受ける。人形師の屋敷で雄大と何度か出会っている。
雪絵
僕の大切な人。恋人。
鈴木
人形師。目が細く肌が白い。亡くなった人を忘れられない人の為に人形を作っている。K2という人形師のサークルもある。
鈴木の弟子
亡くなった夫を作るために鈴木の弟子になる。存在してはならないような人形を作ることに憧れている。
芥川龍之介の「地獄変」がモチーフ
芥川龍之介の小説「地獄変」がモチーフとなっているので簡単にあらすじをご紹介します。
<地獄変のあらすじ>
平安時代。当代一と言われた絵師がいた。
絵師は醜い容貌だったが娘はたいそう美しかった。
娘は美しいあまり大殿に見染められ女御となる。
ある日、大殿から地獄変の屏風絵を頼まれる。
絵師は狂人のような行動をとり絵を描き上げようとするが、どうしても最後の焼け死ぬ女房の絵が描けない。
日頃、絵師から娘を返せと言われていた大殿は牛車に娘を縛り火を放つ。
絵師はその姿を目に焼き付け見事な屏風絵を完成させる。
翌日、絵師は自ら命を絶つ。
怖かった箇所
人形を作ってもらった後に人形から聞こえてくる声にぞっとしました。
セリフで一番不気味だったのは・・・
「何をあんなに騒いでるんだろうね。だってそうだろう?僕が彼女たちの写真をもうすでに撮っているんだから実物が死んだってどうだっていいじゃないか」
「去年の冬、きみと別れ」より引用
登場人物で一番怖かったのは人形師の鈴木です。
だから、僕が鈴木に異論を唱えたときはちょっと意外でした。
人形師が木原坂に「本物が消滅することで偽物が本物以上に輝く」みたいな事を言います。
自分を持たず流されやすい木原坂は、写真を本物以上に輝かせるために本物を燃やしたのではと僕が推測してしまうというのもある意味怖かった。
分かりにくかった点
後半になると僕と君がいっぱい出てきて、一瞬誰の事かごっちゃになってきました。
落ち着いた時間に読みなおしました。
手紙の相手。
誰だか分からない相手と木原坂は手紙のやり取りをしてます。
その中で僕の事を2度会いに来てくれたと言ってるから、僕とのやり取りではないことが分かります。
「君はだれ?」と木原坂が言っています。
一瞬、おかしくなって妄想を言ってるのかと思いましたが、小林との手紙だったんですね。分かりにくい。
木原坂の姉と思っていた女性が、実は姉ではなくて恐らく、僕が姉と思って会っていたのはずっと最初から百合子。
これもかなり最後の方まで全然分からなかった。
小説に登場してくる本
3つの小説が登場してきます。
・「地獄変」芥川龍之介 この小説がモチーフになっている |
・「雪」オルハン・パムク 亜希子の読んでた本として登場。42歳の詩人が主人公の政治小説 |
・「冷血」カポーティ 実際に起こった殺人事件を題材にした小説 |
下の二つの小説は読んだことないですが、機会があれば読んでみたいです。
ラストの二つのイニシャル
これが全然分からなくて、知恵袋の解説読んで納得しました。
この小説そのものが小説の中の小説になっていて、完成した小説を持って本当の復讐が終わる。
小説のなかの木原坂姉弟は仮名で、本当の二人の名前のイニシャルって事です。なるほど面白い!
「去年の冬、きみと別れ」を読んだ感想
ミステリーあまり読み慣れてないです。
普段、なかなか手を伸ばさないジャンルなので、分かりにくかった。
特に語りてが僕や君を連発するので誰の事か分からなくなってくる。
これも手法の一つなのかな。
通勤電車でちょっとづつ読み進めたので、後半が特にごっちゃになってしまいました。
今後は登場人物の複雑なミステリー読むときは、メモ取りながら落ち着いた時間帯に読むことにします。
全体的に気味が悪い登場人物が多い。
後はK2のサークル内容いまいち分からない。
亡くなった人が忘れられない人が集まってるのか、人形師のファンが集まってるのか、一体何のサークルなんだろ??
そういえば、人形師に弟子入りしている奥さんも理解不能。
鈴木はもっとよく分からないけど。
芸術を追求するあまり狂気に走るというのは、個人的には受け入れたくないですね。