サスペンス小説 小説

あまりにも残酷な人生「イノセント・デイズ」早見和真著

「整形シンデレラ」とよばれた確定死刑囚、田中幸乃。
その女が犯した最大の罪は、何だ?

「イノセント・デイズ」概要

著者:早見和真

嫉妬に狂い元恋人の自宅に放火し、妻と双子の赤ん坊3人を殺害した罪により
死刑宣告をされる田中幸乃。
小説の出だしは拘置所の朝から始まる。

徐々に幸乃の子供時代からの悲惨な生い立ちが明らかになり
周りの人間との歪んだ関係、マスコミの過熱報道なども詳細に描かれていく。
幸乃に救いの手は差し伸べられるのか?

★登場人物

田中幸乃

死刑囚
悲惨な生い立ちで、3人を殺害した放火犯として死刑囚となる。
興奮すると気絶するという病気を持っている。

佐々木慎一

フリーター
小学校時代の幸乃の幼馴染。

丹下翔

弁護士
小学校時代の幸乃の幼馴染。祖父は産婦人科医。

倉田陽子

妊娠中
一人息子がいる。幼少期幸乃と一緒に過ごした幸乃の義姉。

小曽根理子

翻訳家
幸乃の中学生時代の同級生。

田中ヒカル

幸乃の実母
元ホステスで17歳で幸乃を出産し、再婚するが事故死。
その後、幸乃は祖母の美智子に引き取られる。

井上敬介

老人ホーム勤務
幸乃の元恋人。妻と1歳の双子の父親。

八田聡

敬介の友人で幸乃を心配している。

佐渡山瞳

女性刑務官
拘置所で幸乃の担当になる。

上記以外にも中学時代の同級生たちや
証言者などたくさんの登場人物がいます。

★テーマや要素

「イノセント・デイズ」は以下のような要素が含まれています。

  • 悲惨な生い立ち
  • 義家族
  • いじめ
  • 暴力、DV
  • 死刑制度
  • マスコミ報道
  • 裁判
  • 偽善

このような要素が気になる方におススメの小説です。

「イノセント・デイズ」ポイント

やりきれない気持ちになりました
メンタル弱っている時は読まない方がいいのかもしれません

幸乃の周りの人間関係

とにかく周りが本当に酷かった。

早くに事故死してしまった実母のヒカルは自身も悲惨な生い立ちながらも
ちゃんと幸乃を愛していたと思います。

でも、肝心の母親がいなくなってしまった。
ここから幸乃の人生は転げ落ちるように転落していきます。

祖母、同級生、恋人とどれもロクでもないのばっかりです。
子供の頃に愛情に飢えてしまうとこのような行動に走ってしまうのでしょうか。
どうしてそっちを選ぶんだろうって思うような事ばかりです。

周りの人間も自分を守るのに必死です。
むしろ幸乃を犠牲にして自分の位置を守ろうとするような人間ばかり。

警察から押収された幸乃の日記には「必要」という単語が頻出していたというシーンがあります。
幸乃は誰かから必要とされたかったわけですが、それが例え暴力や利用されただけだったとしてもそれに気づかないほど病んでいました。

いじめのシーンも多く、読み進めるのに結構辛い場面が多かったです。

マスコミの在り方と他人の不幸

中学時代に幸乃に酷いことをした小曽根理子。
今は少し有名な翻訳家となった理子の元にマスコミは押し寄せます。

理子は正直に自分の思った通りの事を取材で話すのですが
マスコミが欲しかったのは幸乃がトンデモない少女だったという証言でした。

理子のインタビューは全てカットされてしまいます。

また茶の間の正義みたいな聴衆も皮肉っています。

幸乃同様に実母のヒカルも悲惨な人生でした。
そのことを聞かされた産婦人科医の丹下の場面です。

丹下は何を感じればいいのかわからなかった。当然心は痛むものの、一方では週刊誌を読むようなしらじらしい気持ちも沸いた。本人の言うように「よくある話」に思えたのだ。
この場で正義感を振りかざす部外者の方が、私にはよっぽど胡散くさく感じられる。みんな柵の外から好奇心むき出しで眺めながら、心を痛めたフリをしているだけだ。この世にワイドショーなんてものがあることが一つの真理なのだと私は思う。

少しドキッとさせられる場面です。

慎一と翔

それでも幸乃には救いの手が差し伸べられます。
幼馴染の慎一と翔が死刑を回避しようと立ち上がります。

慎一は受験に失敗し、ひどい苛めに遭い引きこもり
家庭内暴力という最悪な少年時代を送ります。

一方の翔は祖父母は産婦人科医という家系で
自身は弁護士となっています。

久しぶりに再会した二人は一緒に協力し合うのですが、慎一は少し翔に劣等感を抱きます。
これは当然そうなると思います。

一人で奔走している慎一と、幸乃の為に弁護士仲間を集めて
50人規模の支援団体を立ち上げる事の出来る翔では大きな差があります。

そして慎一はある日付が頭に引っかかっていたのですが思い出せませんでした。
その日が来たときに自分の誕生日だと初めて気づきます。
慎一もある意味病んでいたと言えるでしょう。

幸乃の周りの人たち

幸乃の死刑判決を知り、過去の人たちは驚愕します。
そもそも幸乃は人を殺害するような人間ではないと知っているからです。

慎一と翔はともかくも他の登場人物は
自分の身を守るのに必死な者や、胸を痛めつつも自分は安全な場所にいて
そこから動こうとは決してしない人たちです。

幸乃はもしかしたら死刑囚とならなかったとしても
幸せに生きられただろうか?と思わず考えずにはいられません。

「イノセント・デイズ」を読んだ感想

胸が痛くなるような小説でした。
しばらくは重い小説は読みたくないなあって思いました。

どうして幸乃は選んではいけないものばかり選んだんでしょう。
敬介に執着したってどう見ても幸せにしてくれそうにありません。

ホストにハマっていく女性もこんな感じなんでしょうか。

個人的には一番幸乃の事を思っていたのは慎一だと思いますが
慎一もメンタル弱そうだし、母親のちょっとした一言で家庭内暴力に走るような人物なので、幸乃を受け止められるかどうか疑問です。

新聞やマスコミ記事だけ読めば
幸乃は本当に酷い人間で、敬介は可哀想な被害者に映ってしまいますが、読み進めるうちに単純にそうではないと分かってきます。

なんかこの小説を読んだ後だと
ニュースの見方が変わってしまいそうです。

よく分からなかった箇所が、陽子の一人息子の蓮斗がずっと母親に対して敬語で話していた事。
ここが何故だか分からなかったです。

テレビドラマ化

2018年にドラマ化。
佐々木慎一(妻夫木聡)、田中幸乃(竹内結子)、丹下翔(新井浩文)です。

竹内さんが出演しているので、ストーリーもストーリーなので、少し見るのが辛そうですね。
レビューを少し読んだんですが、見るのが辛いという意見が結構あったので、私は辞めておこうと思います。

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