私は、
妹を殺しました―――。
『凍花』概要
著者:斉木香津
仲の良い三姉妹と両親の5人暮らし。平凡な家族内で殺人事件が起こる。
長女の百合が次女の梨花を殺害したのだった。
残された末妹の柚香は家の中で百合の日記を見つける。
そこには驚きの内容が記されていて、柚香は真相究明に乗り出すこととなる。
登場人物
園部柚香(21)
大学生。三姉妹の末っ子
園部百合(27)
デザイン会社勤務。三姉妹の長女
美大卒。いわゆる優等生タイプ。妹の梨花を殺害してしまう
園部梨花(25)
デパートで宝飾品の販売。次女
にぎやかな性格で派手好き
柾也
柚香と同じ大学で柚香の彼氏
鹿島亮
百合と同じ大学だった。かつては百合に好意を持っていた
おススメのポイント
「凍花」を読んで思った個人的なおすすめのポイント
殺害理由
当初の殺害理由は
百合はカスミンと名付けたヌイグルミを大事にしていたのだが、そのヌイグルミを梨花に投げられたためカッとしてアイロンで投打。
冒頭のあたりで殺害理由が書かれていますが、まず27歳の女性がヌイグルミを投げられたくらいで人を殺害するという違和感。
しかも騒がしい次女や、ふざけた性格の三女と違い、長女はしっかり者で周りからは才色兼備と言われている。
しかし、この違和感も読み進めるにしたがって徐々に解決していきます。
長女百合の実態
百合が梨花を殺害するなんて信じられない柚香はブログを通じて情報を呼びかけます。
しかし、そこには自分の知らなかった百合の真実が送られてきます。
しかも、柚香は家の中で百合の日記を発見します。
その日記には驚くべきことが書かれていて、柚香は百合に嫌悪感を抱くのでした。
つい愛想笑いを浮かべて、いかにも気に入られようとしている表情を作ってしまう。話しかけられると、どういうふうにこたえれば一番受けがいいのかとか、そんなことばかり考えて、結局は当たりさわりのないことを言って、かえって嫌われてしまう。
『凍花』より
百合の日記の一部です。苦しんでいる様子がよく分かります。
こういう気持ち分かるなあってなりました。
誰の目線で読むか
殺害した本人の百合自身の描写はほとんどなくて、ほぼ柚香のシーンになります。
だから最初は柚香の気持ちになって読んでいくのですが、途中から百合の気持ちに傾いていって、段々気の毒になってきます。
どの登場人物の気持ちも何となくは分かっても、完全には理解できません。
よって何で殺してしまったのか私自身はよく分からないまま終わってしまいました。
この小説もいわゆる『イヤミス』に該当すると思います。
ちょっと救いのない感じのラストになっているので好き嫌いが分かれそうな小説だなと思いました。
『凍花』を読んだ感想
どこにでもありそうな平凡な家庭に潜んでいた狂気みたいなものは所々ゾクっとしました。
やはり人間はどこかでガス抜きというかハメを外す期間があった方が良いんだろうなと感じました。
無理をすると必ずどこかでひずみがやってくる。そんな小説でした。
また何があろうと家族は家族であり、血のつながりというのは切れないものなのだとも思いました。