賞味期限切れの片想いと
好きでもない現実の彼氏
どっちの恋が正解ですか?
「勝手にふるえてろ」概要
著者:綿矢りさ
京都出身
2001年「インストール」で文藝賞受賞。
大学在学中に「蹴りたい背中」で芥川賞を受賞して
一気に注目を浴びる。
2012年には「かわいそうだね?」で大江健三郎賞受賞
この「勝手にふるえてろ」は
織田作之助賞にノミネートされて
2017年に松岡茉優主演で映画化されています。
主人公は片思い以外に恋愛経験のない26歳のOL。
中学時代の同級生に思いを馳せつつも会社の同僚から付き合って欲しいと告白される。
かなりのオタク気質の主人公は、妄想を爆発させて時には積極的に、時には暴走気味な行動に出てしまう。
果たしてどちらの男性を選ぶのか?
テーマや要素
以下のような要素が含まれています。
- 妄想女子
- 二人の男性が気になる女性
- 初恋を引きずっている
- 好きな人か好きと言ってくれる人か
- 昔の同級生との再会
妄想全開と突拍子もない行動をとる主人公の女心が揺れます。
登場人物
江藤良香
(株)マルエイの経理課に勤務している26歳のOL
中学の時の同級生イチに片思いして未だに引きずっている。かなり妄想癖がありオタク。音楽はテクノが好き。
イチ(一宮)
良香の中学校2年生の時の同級生
東京に上京していて同窓会で良香と再会する
ニ(霧島)
良香の会社の同僚
営業課の人間で経理課にたまにやってくる。元体育会系で仕事は出来る。良香とは同期。
来留美
良香と同じ経理課に勤める同僚
少し派手な女性。
木村くん
良香の中学時代の同級生
イチと同じく状況組で一部上場企業に勤務。高級マンションで暮らしている。
共感できる部分がすごく多かった
文章は良香の独白でずっと進みます。
その心の声が結構共感できる部分が多かったです。
日常のふとした事や思ったことです。
中学の時の良香
目立つ生徒ではなかった良香は強気な女子が怖かったといいます。
人間どうしが会ってすぐに野生の勘で
「勝手にふるえてろ」より
相手の優劣を決めるあの一瞬
これ分かる。第一印象で大体分かってしまうあの独特の感じ。
大人になってからも本能的に感じる事はあるけど、特に思春期って敏感です。
会社での良香
これは経験ある人は多いんじゃないでしょうか。
午後から用事で半日有給を取った時とか。
良香が仕事を早退した時に、みんなが仕事をしているなか自分だけが帰り支度をしているという爽快感を語っています。
この気持ちすごく分かります。
意外と冷静な部分も
思い出はきれいなままで-
「勝手にふるえてろ」より
きれいなままにしておきたいということは、
実際はもうそれがきれいな思い出ではなくなったことを
頭のどこかで知っているからだ
そんなに美しくもない思い出でも美化しがち。
でも、きれいな思い出はきれいなままで良いような気がする。
そこまで考えた事なかったけど、なんか切ない一文でした。
こういう人は多いと思う
周りよりも我慢強いせいで、いつまでもリタイアできず
「勝手にふるえてろ」より
結果人一倍がんばったのに何も得られない
これ頷いてしまった。こういう人います。会社でも身近でも。
駄目な男性から離れられない女性とかもこのタイプな気がします。
もう離れればいいのにって思うけど頑張ってしまうんですよね。
良香の突拍子もない行動
いくつかありますが特に印象的な二つ。
同窓会を開催
中学時代は教室の隅でひっそり生きていたと自分で認識している良香が、なかなかとんでもない方法で同窓会を開きます。
かなり大胆な行動ではないでしょうか。
頭も働きます。この件で良香の印象がガラリと変わりました。
有給を取るための行動
こちらはもう読んでてビックリでかなりの暴走です。
まさかこう来るかと・・・後先は考えなかったんでしょうか。
しかし本人はケロっとしてるのが面白い。
『勝手にふるえてろ』を読んだ感想
冒頭からいきなり妄想炸裂です。
人間誰でも多少の妄想癖はあると思いますが、かなりのこじらせ体質。
でもある意味幸せな気がしました。
たまに妄想や夢が現実で、現実が夢でみたいな小説がありますが、主人公たちは十分幸せそうでした。
ただニと良香ですが、あまり合わないんじゃないかと個人的には思ってしまった。
良香の趣味であるwikipediaで絶滅危惧種について調べる。
このことについて良香が喋ると全く興味を示してくれない。
良香の性格からして物足りないのでは?と思ってしまいました。
解説が辛酸なめ子さんの解説にドッキリさせられました。
心は何かを空想しているとき、それが現実なのか
「勝手にふるえてろ」より
ファンタジーなのか区別がつかないので
空想で満たされると、そこから進まなくなり
リアルな願望が実現しなくなってしまうそうです。
よく自分が成功した姿をイメージトレーニングとかやってる人いますが大丈夫でしょうか?
空想で満たされる事はないですが、いや、ないと思いたいですが
多少の空想は誰でもあるので気を付けたいと思います。
映画化『勝手にふるえてろ』
2017年に映画化されています。
主演は松岡茉優で不思議ちゃんな雰囲気が良く出ていました。
小説よりもコメディ色がより強かったように思います。
恋愛したとき特有のわけわからなさみたいなのが面白かったです。
レビュー見たら泣けたという書き込みも多く見かけたけど、私は泣けはしなかったかな。
それだけピュアじゃなくなったのかもしれない。