小説 現代小説

奇妙な関係「インストール」綿矢りさ

押入れのコンピューターから覗いたオトナの世界とは?!

「インストール」概要

第38回文芸賞受賞作。

クラスメイトの光一にすすめられて母親に内緒で不登校を始める主人公。

大型ごみとしてパソコンを捨てる朝子は一人の少年かずよしと出会います。

そして少年に勧められ風俗嬢になりすましチャットのアルバイトを始めるのでした。

【著者:綿矢りさ】

京都出身。
高校生の時に「インストール」で作家デビュー。第38回文芸賞を受賞する。

大学在学中の2003年に「蹴りたい背中」で第25回野間文芸新人賞の候補となり、2004年(平成16年)に同作品で第130回芥川龍之介賞受賞。

最近では安定的な皇位継承策を議論する政府の有識者会議のメンバーに出席したりもしている。

「インストール」は上戸彩主演で映画化されている。他に映画化された作品は「勝手にふるえてろ」「私をくいとめて」「ひらいて」

テーマや要素

「インストール」には下記のような要素が含まれています。

  • 女子高生
  • 小学生の男の子
  • 不登校
  • ネットバイト
  • 奇妙な出会い

奇妙な2人の奇妙な関係。引きこもりつつ冒険しているようなお話です。

インストール・登場人物

朝子

17歳。クラスメイトの光一に言われ母親に内緒で不登校を始めます。

光一

朝子のクラスメイト。早稲田志望。

ナツコ

クラスの担任で光一の彼女

かずよし

12歳。青木さん家の息子。朝子が捨てたパソコンをもらう

青木かより

かずよしのお母さん。朝子と同じマンションに住んでいる。下着メーカー勤務。

聖雲

チャットの客。かずよしを気に入っている。

朝子の環境の変化

しき

全て捨てるってやってみたいです

朝子が環境を次々にリセットしていくが、なかなか自身の心がついていかずに戸惑っている様子がうまい。

「何者かになりたい」という理由で不登校を始めます。

決めたのは自分ですが、クラスメイトの光一に背中を押されます。

朝子が自分の意思のみで動いたのって、部屋中を断捨離する時とラストだけじゃないかな?

光一や小学生のかずよしに言われて、動き出して、リセットとインストールを繰り返している印象でした。

かずよしと出会った時に

猫と子供はたとえ警戒心丸出しであっても寄ってきてくれると異様に嬉しい。

『インストール』より

と言ってるので、人との出会いは内心うれしいみたいですね。

人物の組み合わせ

今ならかずよしのような小学生いても驚かないですが、20年前なら結構、新鮮ですよね。

風俗チャットで稼ぐネカマ小学生と、それを手伝う不登校女子高生。

この組み合わせだけで、すでに面白そう。

主人公の朝子は頭がよくて少し冷めた感じの女子高生。もしかしたら著者は自分をモデルにして朝子像を作ったのかなと思いました。

特に不満があるわけではないのに、小さな抵抗(革命)を起こすところがいかにも高校生っぽい。

かずよしのお母さんが息子とは正反対なキャラになってます。

高倉健のようなプラスの不器用さではなく、この青木さんのような相手の人間を思わずのけぞらせてしまう程の異様な一途さをぶつけてくるマイナスの不器用さを持った人は実際迷惑だ。

『インストール』より

瞼を閉じれば想像だけで人物が動き出しそうです。

素朴な感じで朴訥とした良い意味の不器用じゃなく、周りの失笑を思わず買ってしまうような不器用さ。

頭の回転が速く、要領の良いかずよしとは対照的ですね。

自分を初期化

朝子は環境を何度かリセットします

  • 学校に行かなくなる
  • 部屋中の物を捨てる
  • かずよしに会いにやってくる
  • チャットのバイトを始める
  • 最後の決意

最初の頃と最後の方とで朝子の心境の変化を感じながら読むのが面白いです。

結局、朝子は人が好きなんでしょうね。

「インストール」を読んだ感想

しき

実は読むのは2回目です

かなり前に読んだけど、内容をすっかり忘れていたので再読しました。

朝子の行動やセリフがああこういう感情あったあった。と懐かしむような気持ちになりました。

もし朝子がかずよしと出会わなくても、恐らくどこかで再インストールして、前に進んだでしょうね。

10代ってそういうもんだと思うから。

チャットの事を果てしない一期一会って表現していたり、文体がみずみずしくて、良い意味で照れくさくなってくる小説。

え、ここで終わり?ってラストでした。

映画「インストール」


邦画を見るなら断然U-NEXT

上戸彩主演で映画化されてます。

2004年なので今から19年前の映画。

主演の上戸彩さんも制服姿です。若い!

同じく綿矢りささん原作の「勝手にふるえろ」は映画も原作も面白かったですが、こちらはどうなんでしょうね。

映像がちょっと古そうだけど機会があったら観たいです。

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