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短編小説「掌の小説」川端康成

「たなごころの小説」もしくは「てのひらの小説」とも読む

編からなる短編小説集

 

「掌の小説」概要

【著者:川端康成】

川端康成が20代から書き始め、40年という年月をかけて作られた作品。
1971年に刊行
幻想的な作品から辛い現実を書いたもの、詩的な作品、ブラックユーモアのある作品など
色々な作品が集められている

著者:川端康成

(1899~1972)
大阪府出身。ノーベル文学賞受賞。

代表作は、『伊豆の踊子』『抒情歌』『禽獣』『雪国』『千羽鶴』『山の音』『眠れる美女』『古都』など。

有難う

しき

多分これが一番有名ですよね

ありがとうさんと呼ばれる運転手が母娘を送迎する話です。

でもその母娘は楽しい旅に行くのではなく、母親は貧しいので娘を売りに行くのでした。

娘の席からは運転手の肩しか見えません。

運転手は追い抜くたびに動物にですらありがとうと言います。娘は次第に運転手に好意を持ってしまいます。

娘に対し不憫に思っていた母親は、運転手に娘が好いているみたいだから一晩付き合ってやってくれと言います。

一晩過ごした運転手は翌朝母親を説得します。

母親は娘を連れて帰りますが、それは春までで春になればまた娘は売られに行きます。

この後、どうなるかは分かりませんが、運転手は帰り道に母娘を乗せ感謝しながら運転します。

恐らく、運転手も娘を気に入ったのでしょう。

願わくば、運転手が春までに娘を迎えに行って欲しいですね。

百合

まるでギリシャ神話みたいな話でした。

ギリシャ神話では人間が色んな思いを持ってよく花に変身します。

これも百合子という少女が主人公で、子供の頃から好きな人と同じようになるためにおかしな行動をとる子でした。

そんな百合子も結婚します。

夫を愛するあまり自分も同じようになろうとし、眼鏡をかけ、髪を短くし、ひげを生やします。

どうやって生やすのか知りませんが・・・。

しかし夫はそんな奇行を許しません。

徐々に百合子は神を愛するようになり百合になってしまいました。

雪隠成仏

これはブラックジョークのようなお話です

ちわ

これはブラックジョークな話でした。

とても分かりやすかったです。

ライバルのトイレに閉じこもって、とうとう病気になって亡くなってしまいました。

人の足を引っ張るなという教訓でしょうか。

まんが日本昔話に出てきそうなお話でした。

この話が一番好きです。

ものすごく切ない話で旅役者の話です。

16歳で子供を産んだ子役の少女は、子供の父親に捨てられます。

別れると子供の顔が男の顔と似てるように見えてきます。

やがて子供も子役になり、その子役とも別れてしまいます。

事情は分かりませんが旅役者なので人との別れが多いのでしょう。

女は今度は別れた子供の顔はやっぱり自分に似てたと思います。

女は今度は芝居小屋で父親と再会し、母親の居場所を聞きます。

その母親を見たとき別れた子供に似てたので泣きます。

いつかは子供とその父に会いたいと思い、再び旅に戻るという話。

なんか旅役者の定めみたいなのを見せられたみたいで切ない。

男と女の荷車

男の子と女の子たちが荷車を使ってシーソー遊びをしています。

しき

和やかな風景ではあるのですが・・・

男の子の中の龍雄と春三は、女の子の中にいる百合子ちゃんが気になる様子です。

百合子ちゃんはお嬢様で多分ちょっと可愛い(これは私の予想です)二人は百合子と同じチームになりたくて仕方ありません。

恐らく百合子も二人が自分の事を気に入ってるのを気づいていて、こけると泣いたりして気を引きます。

多分、女から嫌われるタイプの女な気がする。

春三が百合子をなだめて慰めて、何とか遊びに戻しますが、雨が降ってくると二人とも百合子を放ってさっさと帰ってしまいます。

百合子が肩透かしを食らった形になった感じですね。

子供の話なので良かったですが、これが大人の男女の話なら結構生々しいですね。

タイトルが「男と女の荷車」ですから。

夏の靴

しき

このお話はなかなかファンタジーです

この話も結構好きでした。

勘三という馬車の運転手がいます。

勘三は8人乗れる馬車と、身軽な身のこなしが自慢です。

馬車はいつも子供たちがぶらさがってくるので、重みですぐに気づくと勘三はひらりと降りて子供を捕まえてげんこつをするのでした。

今日も女の子が一人ぶら下がってきます。

しかし、何故かこの子は捕まえられない。

この時点でちょっと普通の子ではないと読み手は分ります。

男の子でも捕まえられる勘三です。

しかも、その女の子は裸足なのに、なぜか捕まえられないのです。

勘三が別荘に住んでる子ではと勘違いするほど、高貴な雰囲気の美しい子供です。

村に入ると少女は走ってくるのだそうです。

裸足で走って馬車に追いつくって相当だと思うのですが・・・足からは血が出ています。

とうとう勘三は少女を馬車に乗せてやります。

元来た道へ戻ると少女は感化院へと帰ります。

道端には小さい靴が片方だけ草の上に白く咲いていた。

と、締めくくりますが裸足で相当な距離が走れること、身軽が自慢の勘三が捕まえられないこと、感化院を脱走したらしいのに高貴な雰囲気。

やはりこの子供は人間ではない何かなんだろうなと想像できます。

幽霊か妖怪か座敷童が抜け出してきたのか、このあたりでしょうか。

個人的にはどこかから抜け出してきた座敷童がぴったりかな。

ファンタジーな話だと思いました。あくまで私はですが。

感想

とにかく分かりにくい短編が多かったです。

自分の読解力や想像力のなさを嘆くことになりました。

読み慣れない文体というのもあります。

この他には雨傘なんかも初恋の情景が美しくて、こちらの短編も結構良かったです。

「紅梅」「ざくろ」なんかは私には難しくてさっぱり分かりませんでした。

もはや文字を追ってるだけというか、詩を読んでるんだと思って読みましたが。

ストーリーを楽しむというよりも、文体や情景を楽しんで読みました。

よく分からない部分も多かったので

ただこういう書かれていない部分は、自分で読んでいき想像するような本の文章自体は短くても実は書かれていない部分が長い。

こういう小説を定期的に読もうと思いました。

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